カルロス・クライバー ベートーヴェン 交響曲 第4番 Op.60

 カルロス・クライバーが1983年、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮したベートーヴェン 交響曲 第4番 Op.60。1982年、カール・ベーム追悼として、バイエルン国立管弦楽団を指揮した演奏の翌年、作品の古典性、ギリシア精神を見事に捉えている。

 1982年のものは、日本でもCDとして発売された。この演奏が出た際、多くの人々が衝撃を受けた。1986年、バイエルン国立管弦楽団と共に来日した際、東京文化会館で聴いた時、凄みのある演奏だった上、演奏が始まる前から歓声が上がるほどだったことを思い出す。

 エーリッヒ・クライバーを父として生まれるも、実演・レコーディングは少ない。とはいえ、名匠であった。また、カラヤンも尊敬していた。カラヤンですら、

「あいつは冷蔵庫が空にならないと、仕事をしないな。」

と言うほどだった。自分が納得しないと、ここぞと言うことができなかった。指揮者・音楽家として、自分が納得し、周囲が認めるだけの仕事をしたかったことが肯ける。

 この演奏を聴くと、凄み、ギリシアへの憧れが読み取れる。シューマンが、「ギリシアの可憐な乙女」と評したこと、ピアノ協奏曲 第4番 Op.58からも、ベートーヴェンもギリシアを仰ぎ見ていたことがわかる。カルロスの演奏からも、ギリシアの青空・光が伝わる。コンセルトヘボウ管弦楽団も、カルロスの意図に応えた見事な演奏を繰り広げる。その意味でも、この演奏がCD化されることを望む。