ルドルフ・ブッフビンダー、ブラームス ピアノ協奏曲 第1番 Op.15。クリスティアン・マチェラル、WDR交響楽団との共演。2020年11月15日のライヴである。
1854年に作曲した2台のピアノのためのソナタを土台に、交響曲へと改作したものの、ピアノ協奏曲に落ち着いた。ブラームスは、フェルディナント・ヒラーが指揮したベートーヴェン 交響曲 第9番 Op.125を聴き、交響曲にしようとしても失敗、ピアノ協奏曲として完成した。
この作品にはローベルト・シューマンの自殺未遂、精神病院への入院、死が滲み出ている一方、クラーラ・シューマンへの赦されぬ恋の狭間で揺れるブラームスの心境が滲み出ている。ピアノとオーケストラが対等である上、内容面でも難解で、ヘルベルト・フォン・カラヤンは取り上げなかった。指揮者・オーケストラも大変である。
第1楽章。シューマンの自殺未遂の悲劇の衝撃。深く傷つくクラーラ。ブラームスは直ぐに駆けつけ、クラーラを深く受け取め、慰め、力づける。シューマンの子どもたちを世話するようになる。第2楽章。クラーラを慰め、子どもたちの世話をするうち、ブラームスは許されぬ恋へ動く。淡い思慕が芽生える。また、ブラームスの祈りの声が聴こえる。第3楽章。シューマンの悲劇を総括する。ブラームスの新たな出発への決意も滲み出ている。
1856年7月29日、ブラームスを世に送り出した恩人シューマンがこの世を去ると、クラーラとは生涯、最良の友として人生を歩むこととなった。ブラームスが始めてシューマン家を訪ねた4年後、1857年9月30日、クラーラと子どもたちはデュッセルドルフからベルリンのクラーラの実母、マリアンネ・バルギールの許へ向かった。新しい歩みが始まった。
ブッフビンダーは、ブラームスの葛藤・淡い思慕、シューマンの悲劇の終焉を見届け、新たな出発を果たす姿を描き出した。マチェラルもブッフビンダーに応じつつも、対等である。素晴らしいブラームス演奏としてCD化してほしい。
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