13代目市川団十郎誕生へ

 

 2019年新春の歌舞伎界の話題は13代目市川団十郎誕生である。市川海老蔵が5月、ついに13代目市川団十郎を襲名することになり、長男勘玄が市川新之助を襲名、親子そろって歌舞伎界を盛り立てて行くことになった。

 2017年、愛妻麻央夫人を失ったとはいえ歌舞伎に邁進する姿は目覚ましい。海老蔵自身、

「父と妻とに報告したい。」

と語ったほど、父先代団十郎、麻央夫人への思いが伝わってきた。

 ただ、団十郎を襲名するならそれなりの覚悟がいるだろう。2017年の舞台ではいま一歩の面があった。昨年の舞台を見ることができなかったことは残念だったものの、それなりの成長ぶりが感じられただろう。ならば、5月の団菊祭を見る楽しみが増えてくる。

 さて、13代目市川団十郎はどんな団十郎になるだろうか。目が離せないだろう。

 

 

 

市川海老蔵の今

 

 きょうのNHK「あさイチ」、プレミアムトークは市川海老蔵を迎えての楽しいひと時であった。7月の歌舞伎座公演への意気込み、子どもたちとの一時、何より長男勘玄君が歌舞伎に打ち込むことになり、親子そろっての舞台を控え、その思いを語っていた。

 昨年、夫人、小林麻央さんを亡くし、子どもたちを抱えてより良き舞台を生み出す努力は並大抵のものではない。そんな中で新しい試みに挑戦したり、古典の伝統を大切にしている姿には歌舞伎界を担う看板役者としての自負を感じる。いずれ、団十郎を襲名するにせよ、本当の意味で襲名すべき時期が来ることを待ち望みたい。

 番組の中で、稽古用とはいえ、獅子ものにつかう鬘が披露され、実際着けるとかなりの重さである。そうしたものをつけて、素晴らしい舞台を見せる役者の苦労はただものではない。それ以上に、歌舞伎は立役だけではなく、多くの脇役たち、殊に名脇役たちの演技、芸が立役を引き立てている。改めて、歌舞伎の真の主役は名脇役たちであることを改めて感ずる。海老蔵自身、多くの人々への感謝の気持ちの大切さを感じていた。

 

 

高麗屋、親子孫3代襲名へ

 ここ最近、歌舞伎界の襲名ラッシュが続く。今回は高麗屋、松本幸四郎が2代目松本白鷗、市川染五郎が10代目松本幸四郎、松本金太郎が8代目市川染五郎を襲名することとなり、2018年1,2月、襲名披露興行となった。2017年1月、新橋演舞場では市川右近の市川右団次襲名披露があり、全国で公演がある。歌舞伎界も新しい世代へと移り行く時期だろう。

 今年は中村芝雀の雀右衛門襲名、中村橋之助の芝翫襲名があった。その中で、中村福助の歌右衛門襲名が延期となって3年になる。いつ襲名となるかは歌舞伎ファンたちは気がかりだろう。松本幸四郎としても息子、市川染五郎が43歳、円熟期にさしかかり、そろそろ幸四郎を襲名させ、自ら白鷗を名乗る時期が来たと判断して決断しただろう。国立劇場開場50周年記念として10月から上演している「仮名手本忠臣蔵」第1部の大星由良之助が素晴らしかっただけに、白鷗を襲名する時期が来たとも言えようか。

 襲名ラッシュで新しい世代になりつつある歌舞伎界がどんな形で発展するか。その意味でも今回の高麗屋の3代にわたる襲名に注目しよう。

市川右近、市川右団次を襲名

 ここ最近、歌舞伎界では名跡襲名が相次ぐ。中村福助の歌右衛門襲名は福助の病気療養で延期となり、いつになるかはわかっていない。昨年の中村翫雀の鴈次郎襲名、今年に入って3月には中村芝雀の雀右衛門襲名、秋には中村橋之助の芝翫襲名となる。

 今日のニュースでは、来年の秋、澤瀉屋一門の市川右近が上方では81年間途絶えていた市川右団次襲名の報が入った。右近も師匠市川猿翁とともに、1992年に話題となったバイエルン国立歌劇場来日公演、リヒャルト・シュトラウス「影のない女」の演出に取り組み、自らリヒャルト・シュトラウス「サロメ」、バロック・オペラの傑作、モンテヴェルディ「ポッペアの戴冠」、団伊玖磨「夕鶴」の演出も手掛けている。

 右近が上方の名跡、右団次を襲名し、歌舞伎の伝統を守りつつ、新しい試みにも取り組んでいくことを望みたい。ただ、多くの歌舞伎ファンには中村福助の歌右衛門襲名がいつになるかが気がかりだろう。ともあれ、市川右近の市川右団次襲名を心から祝福したい。

 

 

 

歌舞伎座6月公演の3部制上演に思う

 歌舞伎座6月公演は市川猿之助による「義経千本桜」を3部制で上演するという。松竹、安孫子副社長は、

「インパウンド(訪日外国人観光客)効果を見込みたい。」

という。1等席15000円、2等席11000円、3階A席5000円、B席3000円となる。

 松竹としては、2部制では上演時間が長すぎるという外国人観光客の声に応えたとはいえ、日本人の歌舞伎ファンから見ると集中力が途切れるという声も出てくる。料金体系を見ると、3部制では3回A席で3部全体を見る場合、全部で15000円となり、2部制で12000円で見るより割高になってしまう。それなら、もっと料金体系を見直した方がいいだろう。1等12000円、2等8000円、3階A席4000円、B席2000円した方が2部制で見る時と同じ料金になって合理的だろう。

 また、3部制の場合、通し上演では緊張感が失われる。演目も人気演目中心になり、新作ものが出しにくくなったり、埋もれた古典復活ができなくなる恐れもある。その場合、歌舞伎のマンネリ化を招き、歌舞伎離れも起きる。こうした危険性が大きいことも考えてほしい。

 プログラムについて、日本語版中心で英語解説がわずかでは、外国人観光客もわかりづらい。最近、中国人観光客、韓国人観光客も増え、歌舞伎を見る人も出てくる。手間がかかっても、英語版、中国語版、できればハングル版プログラムを作成した方がわかりやすいだろう。

 松竹としても外国人観光客向けに3部制にしたとはいえ、いささか安易な面があるような気がする。もっと決め細かい対応をすべき面もある。この試みの成果を見守りたい。