1977年3月2日、カール・ベーム、ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団来日公演、アンコール。ベーム自ら、「レオノーレ序曲 第3番」と言い、演奏に入った。
この場に居合わせたことの大きさ。一番得難いことだった。ベートーヴェン唯一のオペラ「フィデリオ」のための3つの「レオノーレ序曲」の中では、内容面では充実したものになっている。二期会がベートーヴェン生誕250年記念として新国立劇場で上演した際、「レオノーレ序曲 第3番」を用いたことも話題になった。
ベームによる全曲盤はシュターツカペレ・ドレスデンとのもの、1963年、ベルリン・ドイツ・オペラと共に来日した際のライヴがある。このライヴも緊張感が漂い、「フィデリオ」の物語を描き出している。トランペットは司法大臣ドン・フェルナンド到着を告げる。このファンファーレが鳴り、フロレスタン・レオノーレが救われた。ピツァロは捕えられていく。二人の喜び。解放された囚人たちと共に、喜びの大合唱となって、オペラが終わる。
高校2年から3年になろうとしていた時、この演奏を聴き、心から励まされたような気がした。音楽大学の夏季講習会で大学の先生につけることがわかっていたらどうなっただろう。どんな出会いになったかわからない。失敗しての出会いの方が大きかったかもしれない。わからない。
今思うと、いろいろ思い巡らしてしまうにせよ、素晴らしい時だったと思えるかもしれない。
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